ティーケーピー 不動産シェアの草分け 地域資産再生でまちを活性化
「遊休資産を再生しシェアリングすることで社会に価値を創造する」を経営理念として掲げ、空間再生流通企業を標榜するティーケーピー(TKP)。今後は中核の貸会議室、レンタルオフィス、ホテル・宿泊研修事業に加え、ブライダル事業の再生や、Park-PFI事業を通じた公園整備による地方創生にも取り組む。
河野 貴輝
(ティーケーピー 代表取締役社長)
不動産の可能性を生かし
シェアリングで施設を再生
TKPは、2005年の創業以来、企業向けの空間シェアリングビジネスの先駆けとして、不動産オーナーから借り受けた遊休施設を、企業向けに貸会議室・宴会場として展開し、全国に空間活用ビジネス市場を創出してきた。自社の強みについて河野氏は「貸会議室は保有ではなく借り上げています。アセットライト経営により投資額を抑え、経営リスクを最小限にできるのが特徴です。世の中に埋もれている『不稼働』『非効率』なもったいない状態になっている施設を活用して再生していくのがTKPのアイデンティティです。」と語る。
2011年、東日本大震災の影響で自粛ムードが広がる中、品川の旧パシフィック東京の宴会場を借り上げ、ホテルの宴会場事業に進出した。さらに宴会場の厨房をセントラルキッチン化し、それまで外注していた弁当・ケータリング事業の内製化を進めた。その後ホテル、旅館事業にも進出。平日は企業向け、土日は個人向けのハイブリッドな宿泊研修施設として運営することによって単価を引き上げ、稼働率を高める戦略で収益を伸ばしてきた。
現在、宿泊・研修のためのホテルや旅館、ケータリング、BPO、イベント企画などのサービスを提供。全国に277施設※(会議室244施設、宿泊施設33施設)を展開し、収容人数は15万7136人、契約面積16万4455坪に及ぶ。これら施設の年間利用企業数は約3万社に上り、リピート率は約90%と高水準を誇る。「床面積とネットワーク力・オペレーション力、顧客数という強みを活かし、積極的な M&A を推進しながら事業領域の拡大と収益力の拡大を目指します」と語る
積極的な買収で新規事業を創出
インテリア、結婚式場にも進出
積極的にM&Aや事業買収を手がける同社は、2019年4月にレンタルオフィス事業大手の日本リージャスを買収。しかしコロナ禍の影響を受け、2023年2月に売却を余儀なくされた。一方で、2024年12月には、システムソフトとAPAMANから「fabbit」事業(レンタルオフィス、シェアオフィス、コワーキングオフィスを国内外20拠点で展開)を譲り受け、レンタルオフィス事業に再参入した。

システムソフトとAPAMANが運営していた「fabbit」事業を、2025年2月に承継、レンタルオフィス事業に再参入することになった
河野氏は「fabbitは事業譲受という形を取りました。TKPのリソースと合わせた共同出店、TKPの既存の拠点のレンタルオフィスへの転換など、TKP本体の事業として取り組んでいきます。これにより時間貸し、月貸し、会員向けオフィスなどを柔軟に組み合わせシームレスな展開が可能になります」と自社事業ならではの効率的な事業展開に期待をかける。
また、2024年6月にはインテリア事業を手がけるリリカラを子会社化。TKPが運営する貸会議室や宿泊研修施設・ホテルへのリリカラ商品の導入を進めるほか、リリカラのスペースソリューション事業とTKPの知見を活かしたレンタルオフィス展開を狙う。
さらに、2020年7月にエスクリと資本業務提携を締結、2024年12月にはノバレーゼを子会社化し、ブライダル事業にも進出している。「エスクリは標準的な結婚式、ノバレーゼは大規模でラグジュアリーな結婚式を得意としています。ブライダル業界は成長が停滞している分野ですが、平日企業向けのパーティルームや研修スペースとして、有効活用し、再生に取り組んでいきたい」と語る。
別府市の公園でPFIに参入
既存施設の再生で地域活性化へ
宿泊事業の安定成長、レンタルオフィス事業の更なる収益化、ブライダル事業で再拡大を狙う同社が、今後の成長戦略として期待を寄せるのが地方創生事業だ。その第一弾として、大分県別府市の海辺にある上人ヶ浜公園を「SHONIN PARK」として2025年7月に開業する予定。TKP初の公募設置管理制度(Park-PFI)事業となる。具体的には、公園に設置されている砂湯の面積を2倍に増床し、温浴施設を新設するほか、商業施設やレストラン、コンテナハウスを使ったオーシャンビューの宿泊コテージ、アウトドア体験エリアなどを整備する。

「SHONIN PARK」の完成イメージ。公園内の宿泊施設はTKPのホテルブランド「ISHINOYA別府(仮称)」として運営する
「これまでは、砂湯はあるもののいわゆる普通の公園で、夜になると真っ暗で地元の人もあまり寄り付かない場所でした。海辺という好立地を生かし地元の人の利用だけでなく、大型客船の停泊地であるためインバウンドの集客も見込めます」と河野氏は語る。自社の空間再生ノウハウを活用し、「公園再生」を通じた地域の価値向上を進める。
また、大分市中心市街地の活性化対策として、大分駅から3kmほどの距離にある大分市営陸上競技場「ジェイリーススタジアム」をサッカーJ1基準のサッカー専用スタジアムに改修する構想を大分市に提案している。「既存施設の改修により整備費用を抑えることができます。サポーターと選手の距離が近い、臨場感のあるスタジアムを実現し、サッカー観戦のコンテンツ力を高め、繁華街への回遊性も高めることができるはず」と、構想を語る。
既存・衰退ビジネスに成長の可能性
幹部養成塾で新たな発想を促す
「レッドオーシャンの中にブルーオーシャンありというのが私の事業に対する考え方。再生が必要な事業の中にこそ新規創出事業がある」と語る河野氏。TKPが求めるのは、それを形にするための新たな発想ができる柔軟性のある人材だ。そこで、コロナ前まで実施していた幹部養成プログラム「河野塾」をこのほど再開した。塾では一線で活躍する経営者などを招き、ビジネスの着眼点などを学んだうえでその時々のテーマについてグループ討論、発表を行い、フィードバックまでを行う。「さまざまな業界の多様な考えに触れることで、広い視野を身につけてほしい」と語る。
今年8月で創業20周年を迎える同社。「20年の歩みに満足せず、ここからがスタートという気持ちでさらなる飛躍のためにここからまた新たな挑戦を始めていきたい。不動産再生だけでなく事業や企業の再生、そして世の中の再生を通じて社会に貢献できる企業になっていきたい」と再生を通じて地域、社会に活力をもたらす未来を描いている。
- 河野 貴輝(かわの・たかてる)
- ティーケーピー 代表取締役社長